[BlueSky: 125] リスクアセスメントのさらなる弊害 Re:122


[From] "OZAWA AKIHISA" [Date] Fri, 16 Jul 1999 21:09:42 +0900

●小澤@一橋大学院環境経済学です。

●後藤さんこんにちは「WEEKLY環境学」をお読みいただきありがとうございま
す。

●リスクアセスメントと少数者の切り捨てに関してはさらなる問題があります。
●例えば水俣病が発生した当時にリスク論を当てはめると、一般市民にとって
有機水銀によるリスクは非常に小さなものです。水俣湾周辺の地域リスクを測
定する事が無いうちには、リスク論的にはほとんど無視してよいことになって
しまいます。

●また、該当地域以外の住民にはリスクがほとんど無いことから「水俣病につ
いては気にしなくてよい、あまり騒ぐな」というような考え方が広まる、ある
いは広めようとすることもおかしな感じがすることでしょう。自分には直接被
害が及ばなくても有機水銀とそれによる水俣病を問題視することは一向に構わ
ないはずですし、これなくしては水俣病は解決に向かわなかったはずです。
●リスク論もまたモラルの概念を描いているのです。水俣病やダイオキシンの
問題は自らに被害がふりかかるかどうかだけではなく、もっと幅広くそれらが
モラルに反するものとして直接の利害だけに囚われず、市民全体が立ち上がろ
うとしている問題なのです。ときに中西準子さんはリスク論からダイオキシン
問題で騒ぐなと言うようなことをおっしゃるのですが、被害の理不尽さなどモ
ラルをも問題にしている市民側からすれば、的の半分以上外れた主張となるこ
とでしょう。

●リスクについて論ずること自体は構わないのです。しかし、リスクアセスメ
ントにおいてリスク比較を行う段階で少数者切り捨ての懸念があり、また、上
で述べたようにモラル上の視点を欠いています。
●もとよりリスクアセスメントは全てのリスクに関わり、しかも資源制約のあ
る国家財政の問題においてはよく適合するでしょうが。社会的分業として自ら
にふりかかるリスクを優先的に取り除こうとするミクロな経済主体に当てはめ
るには元々無理があるように思います。

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一橋大学経済学研究科寺西ゼミ(環境経済学)博士?年小澤明寿(十五夜ノボル)
メール:[jugoya@hk.airnet.ne.jp]
H P:4コマ&ジョークで環境問題を斬る!20XX年からの手紙
    [http://www.hk.airnet.ne.jp/~jugoya/index.html]
    WEEKLY環境学
    [http://www.hk.airnet.ne.jp/~jugoya/new/Weekly_EE.HTML]
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