[BlueSky: 1131] 被曝の危険度( Re:1056 )


[From] Toshihiro Maeda [Date] Tue, 23 Nov 1999 01:41:47 +0900

一ノ瀬さんはじめまして。前田です。
だいぶ返事が遅れましたが、コメントしようと思います。

専門家でないので、おかしな点もあるかと思いますが、なにかおかしな点があっ
たら教えて下さい。専門家助けて!


> ”危険”という形容は、原子力を語る際の、一種の枕詞の様になっています
が、実
> 際にはどの程度危険なのでしょうか?
>
> 作業員の被曝量が分かれば、健康への悪影響を推定することは容易です。
> でも、実際には、被曝量を調査することすらなく、”危険だ!”と騒いでい
ることが多
> いように思います。
> ふき掃除の話にしても、調べに入れば、誤魔化し様はないはずです。
> が、調べて報道された形跡がない。

マスコミがこのような問題を取り上げて、調べて、報道するということは大変
なことのように思います。誤魔化した事実はあります(下の参考文献)。図書
館にいけば、他にも似たような本を見つけることができるはずです。

真実を追求しようと裁判で騒いでいたみたところで、超マイナーなマスコミし
か取り上げないんだから無視してれば誰も知らないのでしょう。たいていは、
そんなマスコミなんて知らないし、知りたいとも思ってないでしょうから。



> 東海村の臨界事故の際には、被曝量については大量の情報が流されましたが、
> 肝心な、「被曝量−健康リスク」の関係が殆ど報道されませんでした。
> これでは、徒に人々を不安に陥れるだけです。
>
> 1シーベルトの急性被曝による相対リスクは、非被曝者に対して
>
> 白血病:5〜10倍
> 肺ガン:1.5倍
> 白血病を除く全ガン:1.3倍
>
> 程度です。
>
>  これに対して、喫煙者の発ガンリスクは
>
> 喉頭ガン:30倍
> 肺ガン:4倍
> 全ガン:1.65倍
>
> であって、正確な比較ではありませんが1シーベルトの被曝と同程度の危険
度です。
> 臨界停止作業を行った作業員の中で、被曝量が最も多かった方で0.1シー
ベルトで
> すから、喫煙の10分の1程度のリスクしか負っていないことになります。
>
> このように、実際に数字を追ってみると、私達が日頃抱いているイメージと
は全く違
> った結果が出てきてしまいます。

たばこのリスクは被曝に匹敵するかも知れません。しかしこうした被曝量のリ
スクは研究者によって非常に幅のあるものになっています。上記のデータはICRP
(国際放射線防護委員会)のものかと思いますが、トーマス・F・マングーソ
医学博士によると、発がんのリスクは10倍以上高くなってしまうそうです。

この発がんのリスクを算出するのに基になったデータというのは、ICRPの場合、
広島、長崎の被爆者のデータからとっているのに対して、マングーソ博士のデ
ータはアメリカの原子力関係者のデータからとったものになっているそうです。

原爆のような高線量域でのデータを、低線量域にあてはめて本当に正しいのか
という疑問があります。マングーソ博士のデータにも統計的な手法に誤りもあ
るそうですが、ICRPの見解よりはリスクは高いことは本当みたいです。

それに、作業員の線量計では内部被曝を計測できません。人工放射性物質は、
自然界の放射性物質にくらべて生物の体内に蓄積する性質が強いそうです(全
部が全部というわけではないが)。


どの程度なら安全か。という議論の前に忘れてほしくないのは、原発をやって
なければそんな心配をする必要がない、ということです。ちょっと程度なら大
丈夫だろ!という考え方が、化学物質過敏症、環境ホルモンなど最近話題の問
題を引き起こしてるように思います。


参考文献
内橋克人 原発への警鐘 講談社文庫


:Ω:
Toshihiro Maeda (q-psyche@air.linkclub.or.jp)


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