[BlueSky: 1054] 2 度目の投稿


[From] "Yoshiyuki Aizawa" [Date] Fri, 29 Oct 1999 01:04:30 +0900


中沢さん、板橋さん、青空MLの皆さん こんにちは。相澤です.
微生物屋の仲間として、板橋さんの参加を歓迎いたします.
あんまりマニアックにならない程度に議論しましょう.

送信者 : Minato Nakazawa <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
宛先 : <bluesky@sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
送信日時 : 1999年10月27日 13:16
件名 : [BlueSky: 1046] Re:1037 はじめまして
> 相澤さんのご専門になるのかもしれませんが,とくに水処理では,
> 大きな可能性があると思います。小島貞男「おいしい水の探求」
> NHKブックスでもでてきますが,薬品を大量にぶちこむよりも,
> チューブ接触酸化法などで微生物の力を借りる方が,安上がりで,
> しかもおいしくなるのですね。ただ,小島さんが書いているように,
> 鉄バクテリアやマンガンバクテリアの利用が,「簡単すぎて安上がり
> でだれももうからないから」日本では流行っていないのだとすると,
> 商業ベースに乗りにくいものは広まらないという構造的な問題を
> どう解決してゆくかが問題と思います。

水処理屋として恥ずかしい限りですが、私は鉄バクテリア等を用いる
水の浄化法を知りませんでした.鉄バクテリアの利用は、城陽市
において行われているようです。あまり採用されないのは、コスト
メリットが少ないということだけでなく,ノウハウの蓄積が少ないことと
用途的に適用されにくいという面もあると思います.微生物を用いる
処理では処理水量が多いと制御が難しいので、都心部のような大量
の水の需要のある地域には不向きです.また、主に地下水を原水に
用いる場合に適用されます。ただそれを差し引いても、もっと全国的に
利用されていい技術だと思います.採用されない理由は供給側の業
者との癒着だったりして・・・。

> ぼくはほとんど知らないのですが,EM菌のように,役に立つかどうか
> 証明されていないけれど広まるということも,商業ベースでは起こり
> うるので,消費者が,ものごとをイメージで選択するのではなく,
> 内容を論理的に判断して意思決定できるように自己訓練しないと
> まずいでしょう。

EMの有効性は誇大妄想的であり、そこがインチキくさいです.
実際にEMを支持している人たちと話をする機会があったのですが,
やはりイメージが先行しているような印象を持ちました.
しかし、私は基本的にEMを肯定的にとらえています.EMを使った
コンポストは今の環境について危機感を持つ人が、自分も何かし
たいというときに、比較的気軽にできることとしてはよいのではない
か思います.自然の力を利用して、自らの手で生ごみを処理でき、
処理の結果できたものは肥料になり、使い方を応用すれば用途は
さらに多様である,となれば魅力的に感じるのも無理はないと思い
ます。電気やガスなどのエネルギーを無駄使いしないとかよりは
気楽そうですし、趣味的に楽しめそうです。
また、微生物がカビとか病原菌とかのイメージしかなかった時代から、
微生物はなんだか使えるらしいぞ、と社会的に認知されるように
なったわけですから、その意味でも、EMの功績は大きいと思います.

微生物屋としては、EMの基本的な考え方に賛成です.板橋さんはよく
ご存知だと思いますが,もともと微生物は自然界で相互に関係し合い
ながら生存しており,その群集がひとつの機能を形成しています
(生態系の分解者の役割、反芻動物の消化など).EMはその考え方を
応用しています。私はこれからの微生物利用は混合培養系になって
ほしいと考えています.微生物は一種類だけでいるより、ほかの種類
の菌のいっしょにいる時のほうがたくさん有用物質を生成するとか、
有害物質を分解するという報告があります.遺伝子を取りこませて
機能を増強しても、菌自体の生存能力が逆に弱くなってしまうことも
多いのです。混合培養系なら自然ですから世論的な攻撃を受ける
こともない。

>>一つだけ懸念するのは,利用する微生物に対して人為淘汰がかかることによって,
>>予想外の形質をもった突然変異種が選択されてしまうことが起こらないか,という
>>ことです。遺伝子組換え微生物などを考えると,さらにこの懸念は深まるのですが
>>,どうなのでしょうか?

いわゆるバイオハザードですね。遺伝子関連については
あんまり強くないのですが、板橋さんも
>突然変異は自然にもおこります.ていうか,形質はどんどん変化します.微生物は

>殖速度,世代交代が早いですしね(最適条件では例えば大腸菌は20分で2個に分裂)

と述べているとおり、微生物の突然変異は非常に頻繁に行わ
れています.したがって人や家畜にとって有害な物質を作る
遺伝子をもつ菌やウィルスがたまたま誕生し,それが優先的
に繁殖できる環境にあれば、ありうると思います.
以前、青空MLで遺伝子組換え食品についての議論があり
ましたが,そこでの意見[BlueSky: 145]と同じです。









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