[BlueSky: 1050] Re:1044 原子力発電のコスト


[From] Minato Nakazawa [Date] Thu, 28 Oct 1999 11:45:36 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

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(件名:[BlueSky: 1044] Re:1043 原子力発電のコストに於て)
Wed, 27 Oct 1999 08:09:13 +0900頃,Shigeru Hoshinoさん:
>  環境問題を語るうえで、このような労働者の人権問題について
> 解決すべきことは多いと私は思っていました
このところ,飯島伸子さんの「環境社会学のすすめ」(丸善ライブラリー)
を読んでいるのですが,この本に次のように書いてあり,なるほどと思い
ました。

「工場のような固定発生源によって発生した環境問題では,労働者の
職業病と地域社会の居住者の公害・環境問題が密接に関連する事例が
多いという点です。工場内の労働環境が安全のための配慮を欠いてい
たり,非衛生的であったり,有害であったりすれば,労働者に労働災
害や職業病が発生します。それでも安全衛生のための対策が取られず,
有害物の処理もなされない状態が続くと,やがて,工場外の地域社会
にまで工場内の有害物質が流出して地域環境問題が発生します。こう
した関係の典型的な例が水俣でした。水俣病の原因者である日本窒素
肥料(株)[のちのチッソ(株)]水俣工場は,水俣病が発生する以前
から,労働災害の多い工場として知られていましたが,実は,健康に
有害な化学物質の処理も杜撰でした。」

一事が万事というやつですね。労働者の人権が確保されないという
ことは,最大の資本であるヒトを大事にせずに目先の利益重視する
ということですから,環境への配慮などするわけがありません。
その意味で,環境問題を語れる状況の前提条件といえるかもしれません。

余談ですが,飯島さんという方は,30年ほど前に,保健社会学の助手
だったんですね。現在の保健社会学(健康社会学と健康学習・教育学)
は全然違うことをやっていますが,昔はこういうことも視野にあった
のかと驚くと同時に,ぼくが学生だった頃,保健社会学に佐久間充さん
という助手がいらして,千葉の山を崩して埋め立て地まで運ぶダンプカー
の通り道の周辺住民の健康調査や環境調査をしていたこと(「ああ
ダンプ街道」という本になって,岩波新書からでています)は,飯島
さんからの流れだったのかと得心しました。

飯島さん流の「環境社会学」だと,対象は人類生態学とまったく同じ
ですね。アプローチが若干違うだけで,「人間をとりまく自然的,
物理的,化学的環境と人間集団や人間社会の諸々の相互関係を追求
するものである。と同時に,社会的事実の調査といったフィールド
ワークによって形成される生きた学問でもある。」点はほぼ同じです。
ところが,飯島さんの本には,今まで読んだところでは同じ建物に
あった筈の人類生態学教室の話は出てきません。不思議です。

=====
Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo
[WEB] http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/index-j.htm


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