[BlueSky: 894] Re:880 クローン人間は認められるのか?


[From] Minato Nakazawa [Date] Mon, 13 Sep 1999 11:59:26 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

(件名:[BlueSky: 880] Re:871 クローン人間は認められるのか?に於て)
Sat, 11 Sep 1999 23:29:05 +0900頃,yuichiroさん:
> ただ、受精卵クローンは自然界に発生する双子、三つ子と同様、
受精卵クローンは,体細胞クローンとは違います。

新潟かどこか(正確な場所は失念)の肉屋さんで,クローン牛の
肉ですという表示を出したという話は,受精卵クローンです。
受精卵が卵割をしたところで,何らかの刺激で2つに分けるので,
物理的には一卵性双生児と同等です。アルマジロみたいに,自然に
一卵性四生児(っていうのかどうか正確な名称はしりませんが)しか
生まない動物もいますよね。

まあ,いわゆる「借り腹」をするなら,発生過程で自然の双子とは
違いがありますが,その違いは体外受精で「借り腹」をする場合と
同じで,体細胞クローンの問題とは分けて考えた方がいいと思います。

体細胞クローンは,体細胞の核を,除核した未受精卵と融合させる
ので,細胞質基質は未受精卵ドナーと同一,核ゲノムは体細胞ドナー
という,キメラになります。Nature Geneticsの最新号によると,
精子についていたミトコンドリアが受精卵中ではほとんど排除される
のと同様に,核と一緒に入っていった筈の少量のミトコンドリアは
融合後の卵内で,ほとんど排除されてしまうそうです。
===
出典:
Evans, M.J., et al. (1999) Mitochondrial DNA genotypes in
nuclear transfer-derived cloned sheep. Nature Genetics,
23: 90-93.
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関連情報(いつまでこのURLにあるかは不明ですが):
http://www.naturejpn.com/newnature/bionews/bionews990908/bionewsj-990908g.htm

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Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo


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