[BlueSky:06616] Re: 今日は7 周年記念日で す


[From] SUKA Takeshi [Date] Fri, 7 Jul 2006 18:42:21 +0900

青空メーリングリストのみなさん

   須賀です。

わたしも、大塚さんと同じく、最近すっかりご無沙汰した
ままになってしまったわけは、中澤さんの場合と共通して
いるように思います。ときを経るにしたがって、係わること、
やりかけで積み残しのことが増えていくような感じがします。
あまりいいことではないかもしれませんね。

もっともわたしの場合は、あの虫に、この虫、あの雑木林
に、この草原、といった感じでやることがふえていっている
だけなので、世間様からみれば、どれも同じことばっかり
じゃないか、ということになりそうです。

今日は、高校の「総合的な学習の時間」に呼ばれて、信州の
自然やその保全の話をしてきました。意外に静かにきいて
くれたのですが、授業のあとで熱心に質問してくださった
のは先生方ばかり(気をつかってくださったのでしょう)、
だるそうに(?)あるいはいろんな感想や興味や批判を
表情の下にとじこめて(?)、黙っていたあの高校生たち
はどんなことを考えていたのでしょうか。

一昨日、ブナ林で小学生の観察会をお手伝いしたときには、
雨のなかにもかかわらず、ザトウムシやらトビケラやら
ハンミョウやら蛾やらアワフキムシやらをみつけて見せに
きてくれたのでしたが。

今、読みかけの本を2冊ご紹介します。

山田 勇(著)『世界森林報告』(岩波新書)2006年
ISBN:4004309999

森林生態学者が東南アジア、南北アメリカ、中国から
ヒマラヤ、ヨーロッパ、アフリカを歩いて、各地の
森林やエコツーリズムの現状を報告しています。
個々の場所の記述量は多くありませんが、実際に
そこに行って、見聞きしたことが具体的に書かれて
います。たとえば、ミャンマーの北部は「地理的に
世界の生物多様性の一つの中心として注目を集めて
いる」ということなのですが、「ミャンマーは軍事
政権が続いているため、何か新しいことを企画して
いくことがきわめて難しい。だが、エコツーリズムは
その中ではもっとも将来性のある事業であると、私も
森林局の人々も考えている」そうです。北タイ山地
について書かれた箇所には「エコツーリズムのいい点
は破壊的な点が何もないことである。道は少し整備
するだけでよく、ルートに沿って、多少の木の手入れ
や、トイレをつくるくらいでよい。何よりも自然と
共に暮らす人々の生活を紹介し、そこから地球環境
問題について考えるきっかけを提供することができる」
とあります。性急にやらず、また期待せず、ゆっくり
育てていくのがいい、ということなのかも知れません。

デヴィッド・タカーチ(著)、岸 由二(解説)、
狩野秀之・新妻昭夫・牧野俊一・山下恵子(訳)
『生物多様性という名の革命』(日経BP社)2006年
ISBN:4822244865

こちらは雰囲気ががらりとかわって、「議論」や考え方
が中心の本です。1992年のリオサミットで生物多様性に
関する条約が提案・署名されたころに、この概念を
広める活躍をした生物学者23人にインタビューして、
その考え方や社会的な含意などをサイエンススタディー
ズという社会科学的なアプローチから、批判的かつ
建設的に分析しようとしています。歴史的な証言集として
も興味深いものが含まれていますが、上のエコツーリズム
の展開の動きなどをみても、やや内容が古くなっている
という印象はいなめない気がします。その点にふれつつ
生態学的な視点からみた景観や地域へのアプローチの
重要性にふれた岸由二さんの解説は、この訳書の大事な
読みどころになっていると思います。

須賀 丈(SUKA Takeshi)
長野県環境保全研究所(飯綱庁舎)
自然環境チーム 動植物生態ユニット



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