[BlueSky:06259] Re: 06244 ちがう人間


[From] Minato Nakazawa [Date] Mon, 06 Dec 2004 20:14:08 +0900

中澤です。ご無沙汰しています。

> 犬は何にも言わないから良いのかも、人間とは意思の疎通が出来るからしんどくなる。
> てなことを2年前に本当に久しぶりに面白く見たドラマ「ぼくの魔法使い」で
> 聞いたような気が・・・
>
> > ペ・ヨンジュンの帰国を見送る女性、、
> > 「ペ・ヨンジュン様は私が守るから大丈夫!」と叫ぶとか。
>
> ヨンさまも愛玩用の犬と同じですね。おっと世の中年女性に半殺しに会うかな・・・
このあたり,「パラサイトシングル」という流行語を作り出した社会学者,
山田昌弘氏が,近著「パラサイト社会のゆくえ」の中(16章)で,氏自身が
1980年代に提唱した「ペット家族論」を発展させ,ホックシールドの
「ファンタジーとしての家族」論を引用しながら,次のように論じています。

| 成長する人形やペットは,子どもの代わりというよりも,「理想的な家族」
| を想像する手段(といって悪ければ,きっかけ)としてあるのだ。人形や
| ペットに接するとき,自分を「いちばんだいじにしてくれる存在」が家族
| なのだと実感する。つまり,人形やペットの向こうに,理想的にふるまう
| 実の家族(配偶者や子)を想像しているのだ。

世の中,ファンタジーを欲している(必要としている)人が多いのかもしれ
ません。コミュニケーションが難しくなるのも道理かと(まあ,こうまで
言い切ってしまうのはちょっと乱暴ですが)。

ペットのこととなるとちょっとおかしくなってしまう,という話は,
「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」でも出てきますが,あの物語でも
ハグリッドは別として,ロンもハーマイオニーもペットそのものよりも,
ペットによって象徴されるものを守るために依怙地になって喧嘩をしてしまう
んですね。ハーマイオニーの場合,ペットの向こうに見ているのは家族じゃ
なくて論理性ですけれども,そもそもペットってそういうファンタジーの拡大
装置なのかも。

ぼくは,人生はしんどいことがあるからこそ面白いと思うんですが,
養老孟司氏が言われる「脳化社会」への道を選択してきた近代文明は,
しんどいことを極力排除して安全に楽に暮らせるように,つまりファンタジー
の中で暮らせるようにしてきたので,もしかすると非婚化・晩婚化の原因は
そのあたりにもあるかもしれません。

いま,今度の日曜に横浜国立大で開催されるシンポジウム(*)のネタを考えて
いるので,つい頭がそっちの方にそれていってしまいました。失礼。
* http://vege1.kan.ynu.ac.jp/esj/index.html

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Minato NAKAZAWA, Ph.D. <nminato@med.gunma-u.ac.jp>
http://phi.med.gunma-u.ac.jp/
Assoc. Prof., Gunma University Graduate School of Medicine
Socio-Environmental Health Sciences (Division of Public Health)
Showa 3-39-22, Maebashi 371-8511, JAPAN
at 19:43:35 on 06 (Mon) December, 2004
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