[BlueSky: 6] Re: ごあいさつ


[From] Minato Nakazawa [Date] Wed, 07 Jul 1999 20:09:04 +0900

中澤@東京大学人類生態です。
なんとか無事にシステムも動いているようでほっとしています。

須賀さん:
> 今日は七夕ですね。みなさんのねがいごとは何ですか?
晴れているにもかかわらず,文京区ではほとんど星など見えません。
別に星が見えなくたって生活に困るわけではないんですが,きれいな
青空や星空が見えると,何か心が浮き立って来るんですよね。

大石圭さんという作家の「出生率0」という小説があります。
世界中で子どもが生まれなくなって希望を失った人類がどのように
転落していくかというディストピア小説なんですが,ここでは
希望の消滅を象徴するように,青空が見えない,スモッグに
覆い尽くされた世界が描かれています。

晴れていたらきれいな青空が見え,希望をもって生きてゆける
ような生活環境を誰もが享受できるような世界が訪れることを
願っています。

ぼくの研究分野である人類生態学は,人類集団が環境とどのように
相互作用しながら生存を続けているかについての包括的理解を目指
している学問です。しかし,現代は,人類と環境の相互作用がかつて
ないレベルにまで大規模化かつ複雑化してきたので,「人類集団の
生存」がどこまで安定なものかに疑念がもたれる状況と思います。
オゾンホール,地球温暖化,環境内分泌攪乱化学物質といった地球
規模の環境問題に加え,ゴミ処理のような地域レベルの環境問題も
あります。

環境問題を解決しなければならないと思うのは,第一に今後も人類が
生き延びてゆくためです。生物多様性の維持とか,次世代に豊かな自然
を残す責任とかいった理念以前に(もちろん,それらの理念が悪いとい
っているのではありません),自分や自分の子孫が幸せに生きてゆく
ためという,利己的な理由によって,ぼくは環境問題に対峙せざるを
えないのです。

そう考えてくると,一つの問題にぶつかります。「誰もが幸せに」って
口でいうのは簡単ですが,本当に可能なのでしょうか? 幸せというのは
絶対的な概念ではありませんから,人と人の間の相対的な利害得失関係を
無視するわけにはいきません。理念的な環境保護運動が往々にして力を
もたない原因の一つは,この辺にあるのだと思います。つまり,この意味
での環境問題解決のためには,物質を基盤とした唯物論的な理解がベース
に必要だとしても,それだけでない,さまざまな視点からの考察が必要に
なってくるはずです。

青空メーリングリストは,さまざまな立場や分野の人の相互討論によって,
多様な視点からの環境問題理解とその解決への足がかりを見いだすことを目指
したものです。ある意味では,妥協点の模索ともいえるかもしれません。
ですから,できるだけ大勢の,違った視点をもつ人に参加して,発言して
欲しいと願っています。

皆さん,どうぞよろしくお願いします。

=====
Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo
Phone:+81-3-5841-3486, FAX: +81-3-5841-3395
[WEB] http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/index-j.htm


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