[BlueSky: 5788] Re:5782 食と農シンポジウム


[From] Akifumi Murase [Date] Sun, 15 Feb 2004 17:19:04 +0900

邑瀬です。

巖さん、シンポジウム出席とコメントありがとうございました。

> 家が近所なのでこれはラッキーと思い楽しみにしていたのですが、子
> 供の幼稚園の行事と重なり、横山さんの背景説明は聴けず、中澤さん
> のお話から聴くことができました。Bluesky 常連の生(なま)姿を拝
> 見でき、なんとなくうれしかったです。

お粗末なところが多々あったかと思います。(笑)

> DGC基礎研による緑化樹剪定枝葉堆肥で育ったサニーレタスも一鉢い
> ただいてしまいましたし。

剪定枝葉堆肥の方はもう少しでブレイクするでしょう。これは私がたま
たま出会った技術なのですが、これからも積極的にいろいろな現場に出
向いて有用な技術を発掘し、科学者の立場から「良い物は良い」と発信
して行きたいと思います。

> シンポで印象に残ったのは、中澤さんのお話で、問題にしているリス
> クは「病気や死亡」だけではなく、「安心が失われること」もまたリ
> スクなのだということでした。「BSEについての日米の議論の食い違
> いの原因の一つはここにあると思う。」という説明で腑に落ちました。

「安心が失われる」リスクに対して、いくらお金をかけるかでしょうね。
日本人の新型ヤコブ病の推計患者数が0.005〜0.007人(2002年1月資料)
であるにも関わらず、その対策(全頭検査)に4,000億円もかけている
のは、果たして最も有効な使い道なのか冷静に考える必要があると思い
ます。背景を十分に伝えないでネカティブ情報を強調するマスメディア
の責任も極めて重大です。

ところで、クロイツフェルト・ヤコブ病治療の記事が最近ありましたね。
http://news.kyodo.co.jp/kyodonews/2004/bse/news/0206-169.html

> 安心を与えるのは、結局のところ科学的データや情報よりも、人を信
> 頼できるかどうかに行き着くような気がしました。人を信頼するには、
> やはり直接会って顔を見て言葉を交わして直感する必要があるわけで、
> それができないときの次善の策としてインターネットなどに公開され
> た生情報を得て判断する。それが、主催者「生活者のための食の安心
> 協議会」の目指すものなのでしょうね。

コミュニケーションの最初は一つ一つ誤解を解いて行く地道な作業です
が、「信頼の閾値」とでも言うか、「この人のやっていることは信用で
きる!」という(理屈ではなくて)感覚的な納得が得られる瞬間がある
と私は信じます。

> だから、たとえばスーパーの野菜売り場で生産者の顔写真を出し生産
> 履歴を公開してみても、好意的に評価はされても売り上げにはつなが
> らない、という結果になるのではないか。知りたい人が知ることので
> きる仕組みができるのは大切なのだろうけど、その成果はごく限られ
> た人にしか意味を持たないかもしれない。

主催者側でもそういう意見がありました。つまり、質は考えず単に「安
ければ良い」という人と、質は重視するが自分では判断しない、いわゆ
る「ブランド指向」の人が大半を占め、積極的に開示内容を見る人はあ
まりいないのではないか、という予想です。

> それはもちろん消費者各自の勝手であり、自分から本気で安心を求め
> ない人にまでわざわざ届けてやる必要もないのでしょう。しかし、現
> 場で努力する人たちにとってはがっかりする結末が待っている気がし
> てなりません。手間をかけて情報を記録・公開しても、いいことは何
> もなかったということになりはしないか。

トレーサビリティ・システムの本来の目的は、「何か問題が生じたとき
に原因まで遡れる」ようにすることです。つまり、一般消費者にまで開
示するのは「副産物」なのです。生産履歴付き農産物がまだ珍しく、高
く売るための「付加価値」のように考えられていますが、近い将来はそ
れが当たり前になるでしょう。自動車のエアバッグのように。

最近読んだ本(「食農同源」足立恭一郎著、コモンズ、2003)に「買い
物は(生産者に対する)投票行動」という表現がありました。つまり、
良いことをしている生産者を生かすも殺すも消費者次第ということです。
情報開示が進むと、今度は消費者側の選択責任が問われるようになるで
しょうね。

> とりとめなく書きましたが、こんなふうにいろいろと考える材料を受
> け取ったシンポジウムでした。もっと長時間あってもよかったなと思
> います。今後どんな展開を見せるのか楽しみです。

では次回は巖さんにもご出演頂きましょう。(なんて;笑)


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