[BlueSky: 4941] FW: メガネトリバネアゲハの輸入について


[From] Minato Nakazawa [Date] Thu, 06 Mar 2003 12:08:21 +0900

青空MLの皆さん

中澤@山口県立大学です。ご無沙汰しています。
jeconetというメーリングリストに,メガネトリバネアゲハの輸入について,
下記のメールが流れました。大事な問題だと思うので,許可をいただき転載します。

ぼくは,伊藤さんの論点のうち,2点目と3点目が気になります。メガネトリバネアゲハ
がブラックバスやブルーギルのように蔓延るとは思いませんが,なし崩し的に他の生物に
ついても規制が緩んでいくのが心配です。【2139】【2140】【4365】で小宮さんや葛貫さん
がご紹介くださったイチイヅタの例もありますし,ペットショップからの流出という
経路は,人智によって避けられる危険だという意味で,なんとしてでも避けねばならない
と思います。

※ なお,青空MLはアーカイヴが完全に公開されるので,中澤の判断で,メールアドレス
とご自宅の情報は伏字にしました。

=====(ここから)
jeconet MLの皆様

守屋@中央農研です

伊藤嘉昭さん Yosiaki Ito <******@**************> から、新聞に投書したが掲載
されなかった原稿の転送を受けました。「朝日新聞がのせてくれなかったので原稿を
送ります。いかなる方法で使われても結構です。」とのことですので、伊藤さんの主
張を多くの人に聞いていただこうと思い、jeconetへ「代理投稿」いたします。原文の
ままですが、段落区切りは私がつけました。

では、では。

---ここから----------------------------------------------

メガネトリバネアゲハの輸入 
輸入禁止と法規・体制の見直しを

伊藤嘉昭 昆虫生態学専攻

 二月八日付の本紙夕刊に”「世界一美しいチョウ」メガネトリバネアゲハ 輸入認
める?認めない?”という記事が出た。本種はニューギニアで絶滅の危機にあり、ワ
シントン条約で標本取引禁止の対象となっているが、「人工繁殖した個体は規制の対
象とならず」、標本が輸入され、ペアー一万円で売られているとあり、農水省植物防
疫課に「輸入可能ではないか」と問い合わせがあって、検討を始めたという。標本は
輸入されているのになぜかというと、生きた幼虫や蛹を輸入してマニアに高価で売り
つけようとしたのだろう。
 外国の生きた昆虫の日本持込みを認めるかどうかを決める法規は植物防疫法であ
り、「日本の植物に害をする虫を入れない」ことが目的だった。チョウは幼虫が植物
を食べるので、これまではすべて輸入禁止だったが、それを一部認めるかどうかが問
題である。
 私は若い頃農水省にいて、沖縄の日本復帰から六年間、それがいたために植物防疫
法により沖縄から本土にニガウリやマンゴーを移出することが禁止されていた侵入害
虫ウリミバエを根絶する事業の主任昆虫学者をしたので、この法律には縁がある。意
見を書いてみたい。
 問題は四つあると思う。輸入された虫が日本に定着して新害虫になる恐れ、これが
日本在来の種と交雑して雑種を作る恐れ、種間競争や病気などの持込みで絶滅危惧の
在来種に打撃を与える恐れ、最後に私が一番心配していることだが、「人工繁殖だ」
といつわって違法に取った採集禁止の種やその子を持ち込んだり、輸入許可になった
チョウの幼虫の中にワシントン条約規制種や原産地の天然記念物の種をまぜて不法に
持込む業者が増える恐れである。
 記事にもあったように、外国の生きたクワガタムシが「害虫に該当しない」として
九九年から輸入解禁され、〇一年には六八万匹もが輸入され、日本各地で雑種が出来
ている。しかも、解禁された種(種別の許可で三〇〇種を越えた)のなかに現地での
採集禁止種をまぜて持込み、一匹十万円以上で売る業者さえいるという(本紙一月二
九日号に日本人二人がオーストラリアで逮捕された記事がある)。東南アジアで、こ
うしたことを報じつつ「日本という国はけしからん」と書いた記事も出ているという。
 農水省はチョウの全種輸入禁止を守るべきである。本来日本の植物のどれも絶対食
わないという保障はないことを考えると、いまの法規でも良いと思うが、クワガタム
シなどにも適用出来る改正もあって良いだろう。外国産の生きた昆虫は、研究用など
の特別許可を除いて輸入を全面禁止すべきである。また植物を食わなければ人間に害
をするものも日本の自然に害をするものも持ち込めるという法律の欠点、とくに環境
省がこの問題について発言権も空港・港での立会いの権限もない現状の改善法を、真
剣に考えて欲しいと思う。

伊藤嘉昭 Yosiaki Ito  七二歳
〒470-0134 愛知県日進市************
tel:&fax:*****************
無職 (名古屋大学名誉教授、沖縄大学前教授)

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*** 守屋成一 中央農業総合研究センター害虫生態研究室 ***
******@************** Tel:************* Fax:**************
*** Sending from Home Office ****
==============(ここまで)

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Minato Nakazawa <minato@ypu.jp> http://phi.ypu.jp/
Associate Professor for Public Health and Informatics,
School of Nursing, Yamaguchi-Prefectural University
Phone +81-83-933-1453 / FAX +81-83-933-1483


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