[BlueSky: 3616] Re:3613 トルコの千年建築と交通 


[From] Minato Nakazawa [Date] Fri, 31 Aug 2001 17:09:00 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

(件名:[BlueSky: 3613] トルコの千年建築と交通 Re:3610 環境教育など
に於て)
Tue, 28 Aug 2001 21:47:46 +0900頃,sukaさん:
> 観光地のカッパドキアで、石をくりぬいてつくった家や教会、
> そして紀元前からの記録があるという岩にうがたれた地下
> 都市をみてきました。
件の本にも出てきました。カッパドキアの石は凝灰岩なのですが,
凝灰岩は手掘りでも簡単に掘り進めることができ,かつ凝灰岩に多
く含まれるゼオライトはミクロな孔がたくさん開いていて空気中の
汚れを吸着することができるのが良かったのだそうです。

ぼくは行ったことはありませんが,杉山寧画伯の画が好きなので,
なんとなくカッパドキアには親近感をもっています。

> ある家は円錐形をふくらませたようなとんがり帽子のかたち
> の岩で、部屋や階段、テーブルなどがそのなかにくりぬかれ、
> アリかシロアリの巣のように部屋と部屋のあいだがつながって
> いました。外は暑いのになかは涼しく、「テラス」にはそよ風
> が吹いていました。冬は雪もふるそうですが、部屋のなかは
> あたたかいのだという話でした。もっとも地震などで一部の家
> はくずれて離村したところもあるようです。
岩を好きな形に掘れるので,家具が少なくて済むのも利点なのだそ
うです。

> 地下都市もつくりかたはほぼ同じで、まさにアリの巣です。
> 確か地下6階までありました。一時期はアラブ人から逃れた
> キリスト教徒がすんでいたとのことです。
深さは地下40メートルで,地下都市同士を連結する地下道は40キロ
メートルにも及ぶのだそうです。戦争のときは15000人が地下に半
年ほど住みながら持久戦に耐えていて,地下で牛や羊を飼い,ワイ
ンをつくるところまであったそうです。

> このような多彩な文明と文化が交錯したトルコですが、現在は
> 「車社会」に突入していました。イスタンブールの街中は自動車
> だらけ、都市間の長距離移動は夜行バスがたよりです(8日間
> の滞在のあいだ3泊が移動の夜行バスだったのできつかった)。
トルコに限らず,どの国でも経済発展とともに車社会になっていく
ような気がします。たぶん,正のフィードバックがかかるんでしょ
う。昨日の日経の朝のニュースによると,中国政府はマイカーの購
入を後押しするために,「低燃費の小型乗用車の取得に伴う費用の
軽減や自動車ローン業務を外資に開放することなどを柱とした消費
促進政策を近く公表する」とのことです。
経済成長のためには市場規模拡大が必要で,マイカー購入支援は,
その最も効率がいい振興策の一つだという理屈なんでしょうが,メ
リットにばかり目をやっていて,車社会のデメリットをきちんと考
えているのかどうか疑問です。

> 時にそれは、断片的な資料の過剰解釈ともなり、研究者の論理の
> 整合性が、対象に内在する構造と、そのまま同一視されかねない。
これは,レヴィ=ストロースの構造主義人類学がニーダムらの機能
主義人類学を受け継いだ人たちからよく受ける批判ですね。
レヴィ=ストロースは,フィールドで何を見ようと,自分の頭にあ
った枠を勝手に当てはめて,そのフィルターを通してしまうので,
初めからストーリーができているのだ,というわけです。
須賀さんのレポートは断片とはいえ,観察そのものなので,構造主
義人類学が受けるような批判を受けるいわれはないと思います。

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Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo
[WEB] http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/index-j.htm


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