[BlueSky: 3048] 生態史観と海洋史観


[From] "SUKA, Takeshi" [Date] Sun, 4 Mar 2001 01:08:48 +0900

ダイさん、小宮さん みなさん

   須賀です。

梅棹忠夫『文明の生態史観』に関心をもってくださった
ことを知らせていただいて、うれしく思いました。
近代に日本がなぜ経済発展したかということに興味を
おもちなら、ぜひ川勝平太『文明の海洋史観』(中公叢書)
をあわせておよみになることをおすすめしたいと思います。

梅棹さんは動物生態学者から転身した民族学者で、川勝さん
は経済史が専門の方です。両方のくみあわせでユーラシア
大陸と海洋アジアの近代史の展望がとても面白いものに
わたしには感じられるようになりました。大陸を論じたの
が梅棹さん、海を論じたのが川勝さんです。

以前のメールで川勝さんの本の一部をかなりきびしくけなし
ましたが、これは川勝さんがご自分の専門でない生物学に
ついて論じた部分についてだけです。逆に経済史の部分に
ついてはわたしはまったくのしろうとですから、ひたすら
関心するばかりで、梅棹理論でわからなかった部分が見事
にときあかされる感じがしました。むしろこの部分について
は経済史にくわしい方のつっこみをきいていみたいような
気がします。

川勝さんの本の冒頭はこうです。
「近代はアジアの海から誕生した。より正確にいえば、
海洋アジアからのインパクトに対するレスポンスとして、
日本とヨーロッパに新しい文明が出現した−これが、
本書を貫く海洋史観のテーゼである。」

梅棹理論が発表されたのは1955年ですから、その生態学的
な発想の部分も、今からみればずいぶん奇妙なアナロジーを
つかっているように思える部分もあります(文明の変化を
植物群落の遷移になぞらえているところ)。この部分をどの
ように解釈しなおせば今日的な議論になるのかは興味深い
話題ですが、これはほかの方から話がでたときにふれたい
と思います。


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