[BlueSky: 2821] Re:2792 虫葬


[From] "suka" [Date] Thu, 1 Feb 2001 01:47:06 +0900

佐川さん、中澤さん みなさん

   須賀です。

中澤さん:
> > そうですね。昨年亡くなった理論生物学者のウィリアム・ハミルトンは,
> > 死後はブラジルの森に遺体を置いて,ダイコクコガネに食べられたいと
> > 書き遺していました(マラリアで急逝したので実現しませんでしたが)。

佐川さん:
> 『後はこの偉大なダイコクコガネが私を埋葬してくれるはずだ。
> 私は彼らの子孫と私の子孫に姿を変えて生き残っていく。・・・・
> ・・・・・・ 中略 ・・・・・・・体は次々と空に舞い上がり、
> 星々の下に広がるブラジルの大原野へ飛んで行く。』
>      「虫を愛し、虫に愛された人」(文一総合出版)より

これをよんで、何か書きたいな、と思いながら、佐川さんが引用された
文を何度もよみかえしているうちに、胸がつまって、なんといったら
いいのか、わからなくなってしまいました。

ハミルトンさんに、2回お会いしたことがあります。

一度は、1990年にインドでひらかれた学会のとき。
二度目は、4年後にパリでひらかれた学会にいったとき、
ハミルトンさんがこられていないのを知って、オックスフォードの
研究室まで押しかけたときです。

当時僕は、大学院でハチがどのように血縁関係を認知しているか
ということを研究していました。ハミルトンさんは、この研究テーマが
行動生態学の分野で流行するおおもととなった血縁淘汰説を
提唱されたことで有名です。この説は、『利己的な遺伝子』や
『社会生物学』といった大きな論争をよんだ本をうみだすきっかけ
にもなりました。

オックスフォード大学のうすぐらい廊下のソファーにすわって、
自分のハチの「研究成果」を説明し、実直で心のこもったコメント
をいただいたあと、思い切ってたずねました。

人間の社会の進化を説明するのに、血縁淘汰説はどのくらい
役立つとお考えですか? と。

ハミルトンさんは、きみにどんなことばをえらんで話したらいいか、
ちょっと考えさせてほしい、といいよどみながら、
人間の社会の進化には、血縁淘汰よりも互恵的利他性の
進化のしくみの方が重要な役割を果たしてきたと思う、
という趣旨のことをおっしゃいました。

「僕もそれに賛成です。」とめちゃめちゃな英語でいいましたが、
ハミルトンさんはこのわけのわからない日本の若者をどう思われた
ことか・・・・・

佐川さんが引用された文をよんでいるうちに、そんなことを
思い出しました。

   須賀 丈







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