[BlueSky: 2394] Re:2393 調査捕鯨拡大にたいして、米が制裁発動


[From] Minato Nakazawa [Date] Thu, 21 Sep 2000 17:40:53 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

(件名:[BlueSky: 2393] Re:2391 調査捕鯨拡大にたいして、米が制裁発動
に於て)
Thu, 21 Sep 2000 03:37:23 -0400頃,Shinsuke Unoさん:
> 現存する鯨の固体数を維持するだけの資源がない、ということも言えるはずで、そん
> な状況での捕鯨というのも納得しがたいんですが・・・。
現存鯨類の個体数を維持するだけの魚介類がいないときに,魚介類
をとるのをセーブしようというならば筋が通っていますが,鯨類を
獲らないというところには論理的につながらないと思います。

> 日本にしても自国の資源利用というものについてもう少し自分達
> で考えて動いて欲しいですけどね。森林資源にしても海洋資源に
> しても他所ん家の庭踏み荒らすような事してきたのも事実だと思
> うんです。
この点はご指摘の通りです。南太平洋や東南アジア諸国から日本が
買い付けてきた木材の量は大変なものですし,インド洋のマグロと
か東南アジアでのエビ養殖とかにも当てはまるでしょう(一面では
現地の雇用創出になったわけですが,自然環境に大きな影響を与え
たには違いありません)。最近ではかなり科学評価に基づいて動く
ようになってきて,マグロ漁船など何百隻もつぶしたそうですが。

しかし捕鯨に関しては,ちょっと事情が違うんじゃないかと思いま
す。紀州の太地町のようなところで昔は沿岸に現れるたびに獲って
いたクジラが沿岸にやってこなくなったのは,鯨油とヒゲの採取目
的で欧米諸国が太平洋のクジラを乱獲したためだといわれています。
それに,IWCでの最近の反捕鯨国の態度ときたら,セントヴィン
セントだとかソロモン諸島が自国の領海内で獲るイルカなどにも文
句をつけるわけですし,資源の多寡にかかわらず捕鯨は許さないと
いう発言もあるそうですから,資源利用というよりはイデオロギー
論争という側面が強いと思います。

伝統的な食文化だから食べるvs可愛いから獲ってはいけないではイ
デオロギー論争で四つに組むわけですが,平行線になるに決まって
います。何らかの外的基準がなければ妥協点は見出せないでしょう。

そもそもIWCが鯨類保護を言い出したのは乱獲の結果としてのク
ジラの絶滅が危惧されたからであったはずで,クジラが絶滅の危機
にあるかどうか,またクジラ保護が魚介類の量にどういう影響を与
えているのか,という点で答えるのが筋です。調査捕鯨で蓄積され
たデータから推測されるとおり,絶滅の危機になどなく,かえって
増えている南氷洋や北大西洋のミンククジラのような種については,
それが魚介類に影響を与えているならなおさら,獲っていい,とい
う結論に至ると思います。大事なのは,獲物を無駄にしないことだ
と思います。

(佐藤さん)
> > 環境問題は票に結びつくのかもしれませんが、少なくとも今の大統領選挙ではほとん
> > ど話題になっていません。日本への制裁をクリントンが発動したからといって、今度

(宇野さん)
> 佐藤さんの御指摘どおりで、今回の選挙では環境関係は、保険制度、社会保障制度、
> 教育といった話題に比べると目立ちませんね。ただ、環境団体への受けはゴアの方が
そういう雰囲気だとすると,選挙絡みというのは,ぼくの邪推だっ
たのでしょう。すみません。

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