[BlueSky: 2173] 青空ML版 CRA [Project EP-B] の呼びかけ Re:2149 エコポイント・チェック( Re2133 )


[From] Minato Nakazawa [Date] Mon, 24 Jul 2000 12:45:11 +0900

中澤@東京大学人類生態です。
ひとつアイディアが浮かんだので,自己フォローします。

エコポイントチェックは,
> 評点のつけ方や項目は適宜見直しを行うべきだということは著者
> たちも認識しています。
ということなので,一歩進んで,青空ML版の質問項目と評点を作っ
たら,もっと今日的なチェックリストができそうな気がします。つ
まり,青空MLでコンパラティブ・リスクアセスメント(CRA)をやっ
てしまおうというわけです。
名前だけは決めました。"ecopoint-side B"です。
Bはもちろん,BlueskyのBです。

CRAは米国環境保護庁が環境問題の優先順位付けのために開発した
手法で,ある地域に関する環境問題の包括的なリストを作成し,問
題の影響の大きさをリスクの側面から比較評価して(この際,健康
リスクだけでなく,生態系リスクや生活の質へのリスクなども加味
する)ランクをつけるものです。評価するのに専門家だけでなく,
市民代表など幅広い人が参加して住民の立場からの意見も取り入れ
る点に特徴があります。

ちなみに,優先順位付けのための手法としては,CRAのほかにも,
エネルギー消費量や資源消費量や二酸化炭素負荷量などに還元して
1つの軸で比較評価する方法(たぶん,環境経済学で有力視されて
いる仮想評価法も値段という1つの軸に換算するので,ここに含ま
れるでしょう),除去や予防に必要なコストで経済的に評価する方
法,科学的あるいは政治的に定められた環境上の目標に対する距離
を用いる方法(環境影響スコアを特定の場所と期間における実測値
で割ることによって正規化でき,さまざまな問題の間での相対的な
比較が可能になりますし,重み付け合計して単一数値にすることも
行われています)などがあります。

高月さんの本に載っていたエコポイント・チェックに使われたCRA
は,国立環境研究所が中心になって,環境庁,地方自治体,大学,
コンサルタント,環境研究所から,関係者24名がパネルとなって,
年2回泊り込みで,環境問題のリストづくりとランクづけをした
(結果は,図8として,リストアップされた15の問題領域[地球規模
の大気変動,有害化学物質汚染,電磁波・放射線など]ごとの4つの
側面[健康,生産,生物,精神]への影響の大きさの,参加者の平均
値が示されています)ということなので,CRAにしては住民参加的
側面が弱いように思います。青空MLで作れば,住民参加的になる
のではないかと思うのです。地域環境問題に限らないので,純粋に
CRA的に住民参加というわけにはいきませんが,「地球市民」的な
考えからいえば,専門家としてではなく,生活者としての視点から
というのも大事ではないかと。

もっとも,住民が1からリスト作りをするのも難しいかもしれない
ので,専門家が作ったリストをベースにして改良することを目指す
のでもいいのかもしれません。

高月さんの本には,表6として,図8のデータを元にした「エコポ
イント作成のための一覧表」が載っていますが,基本的な考え方は,
次の通りです。
(1) 15の問題領域から温暖化,廃棄物,水質汚染,大気汚染,有害
物質の5分野を取り上げる
(2) 各分野について,パネルがつけた4つの側面での得点を加算し,
得点比率を分野ごとの重みとする。温暖化問題24.3%,廃棄物
問題18.6%,水環境問題10.9%,大気環境問題15.9%,有害化
学物質問題が30.3%となる。総得点が100点満点になるように,
重みの合計を10にすると,2.4, 1.9, 1.1, 1.6, 3.0となる。
(3) 各分野について10点満点になるように,25の日常行動に評点を
割り振る。割り振りの基準は,現状の環境負荷全体をひとつの
環境容量とみて,この容量に対してどれだけ負荷を削減できる
かという視点で行われる。
(4) 25の日常行動それぞれのエコポイントが,5分野での評点に重
みを掛けて合計したものとして得られる。例えば「新聞・雑誌
をリサイクルに出している」という行動は,温暖化評点0.6,
廃棄物評点3.1,水環境,大気環境,有害化学物質評点が0なの
で,0.6×2.4+3.1×1.9=7.4となる。
(5) 回答者は25の日常行動それぞれについて,「いつも取り組んで
いる」から「まったく取り組んでいない」まで5段階の自己評
価をするので,「いつも」にその行動のエコポイントの満点,
「まったく」を0点として,その間を4等分して評点とする。

方法としては同じようにできると思います。15から5分野だけを
「日常生活と関連が深い」として取り上げた点は,これだけ携帯電
話が普及している現在,電磁波・放射線を取り上げなくていいのか,
とか,大量生産・大量消費・大量廃棄の産業構造を支えているのは
消費者としての市民なわけですから,そこを外していいのか,とい
った意味で改良の余地があると思いますし,取り上げる25の日常行
動自体も変えてもいいと思います(回答のしやすさからいって,数
は25〜30くらいにした方がいいように思いますが)。

このアイディアはいかがなものでしょう?
青空MLからの情報発信として,役に立ちそうな気がするのですが。

=====
Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo
[WEB] http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/index-j.htm


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