[BlueSky: 1960] [rika:19176] ケナフ


[From] Kimio OTSUKA [Date] Fri, 05 May 2000 14:48:02 +0900

左巻さん、みなさん

ケナフには否定的な([1735]参照)大塚です

左巻さんが理科教育MLにも投稿していらして、そちらにはコメントがつ
いていました。それを踏まえて書きます。理科教育ML にもほぼ同内容の
メイルを出しています。

番号はより否定的な面から順にふったものです。


3)教材として    他にも良い教材があるのでは?

左巻さん[1954]
> #ぼくは、非木材紙ってのがあるんだぞ、っていうことで少し栽培
> して紙づくりをする。そんで木材紙とかとLCA的に比較してみる。
> っていう環境教育はありだと思います。(左巻健男・市川智史共編著
> 『誰にでもできる環境調査マニュアル』[東京書籍]\2400 にケナ
> フから紙作りを取り上げています。)

 ケナフを教材として、学級庭園でアサガオやヒマワリ等と輪作するの
までを止め立てしようとは思いません。他の園芸植物と同様、管理され
た環境の下でケナフを栽培することまでに否定的な方はいないと思いま
す。
 LCA的な比較など良いですね。ケナフを宅配便で送って紙をつくっ
てもらうなんて、二酸化炭素の放出をむしろ増やすのではないか、宅配
便の多くはディーゼル自動車で運ぶので窒素酸化物などの大気汚染も増
やしているのではないかと疑問に思っているのですが、どんなもんでし
ょう?
 

 ただ、他にも良い教材があるのでは? という思いがあります。

 製紙材料としてならば、在来のコウゾ、ミツマタを使った方が、歴史
とのかかわり等で学ぶことも多いと思います。製紙方法もかなり持続可
能な方法が存在しているでしょうし「昔は大変なことをして紙を作って
いたんだ」とか、「けれどもこのような和紙の方が一部の近代的な紙よ
りも長持ちをする」というような勉強にもなります。
 手元で処理できないような量を作ってしまう心配も少ないでしょうし。
 温暖化との関連では例えばミニ雑木林を作るのも良いでしょうね。種
を集めるときに、公園などの人工的な環境で拾ったドングリと雑木林で
拾ったドングリとで芽が出る確率を比べることもできるでしょう。これ
を手がかりに生物間の多様な相互作用を知ることができる。
 里山的ビオトープとして上の2つを組み合わせることもできます。

 手っ取り早くはないですが(教材メーカーからセットで売っているわ
けでもないですし)、文部省のいう「総合的な学習」とか「生きる力」
云々の趣旨にも合った教材のように思えますが、いかがでしょう?現場
の人と時間が増やされずに上記のようなスローガンだけ降ってくる先生
方は大変だなあと思いますが。

 以下、理科教育ML の話題や、左巻さん紹介の
http://www.nipponhyojun.co.jp/johoshi/johoshi6/bress55.html
ケナフ博士のケナフQ&A
の会社の頁を見ての感想です。


荒木さん [rika:19176]:
http://rika.ed.ynu.ac.jp/archive/rika/200005/msg00116.html
> 環境問題ができて、ディベートもできて、こんな素材はそれほどないなぁ
> というのが実感なのですが。


 ケナフを植える前にも、あるいはケナフを採用しなくてもディベート
はできます。ケナフを推進している先生のもとでディベートをするので
は、生徒がちょっと気の毒。



1)地球温暖化対策  全然ダメ

 二酸化炭素の吸収能力が高いことから、地球温暖化対策になるという
宣伝文句が方々でみられますが、かなりナンセンスです。ケナフのよう
な一年草では成長期に固定した炭素は枯れた後で(一部は紙の形を経由
しても)早晩二酸化炭素になるのでほとんど意味がありません。
 大気中の二酸化炭素の削減のためにはバイオマスなどの形で存続して
いる量が大切ですので、木を植えるのがよいということになります。


2)製紙原料として  少なくとも現時点ではダメ

 製紙原料としてのケナフは、品質や供給に季節的なムラがある等など
様々な理由から、国内大手の製紙会社には否定的に見られています。ケ
ナフ推進派のWeb 頁にも現時点では製紙材料として木材には劣ることを
認めつつ、「今後の研究によって欠点は克服されるだろう」という旨の
ことが書いてありました。現在は普及段階ではなく、研究段階であると
見なすべきでしょう。
 かつては熱帯林を伐採して丸裸にしつつ紙を作っていたので、「熱帯
林を守る」がケナフのような代替製紙原料の普及スローガンとして有効
だったと思いますが、現在ではずれてしまっています。
 1)との関連では、持続可能な林業をベースに紙を作るのであれば、
バイオマスとしての森林が大気中の二酸化炭素の削減に貢献するので、
ケナフはますます不利になります。




大塚公雄
東京医科歯科大学


▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。