[BlueSky: 1951] Re:1938 中山間地農業


[From] "Sato, Kenji" [Date] Mon, 1 May 2000 12:57:15 -0400

さとう@みしがんです。
佐川さん、お答え頂きありがとうございました。
根本さんのケースレポートも興味深く読ませて頂きました。

私は農業を、他の産業で働くのと同様な意味での”職”としてはとらえるのを止めた
方がいいのではないかと思っています。第一の理由として日本の気候や土地の条件下
では、農業専業では他の職と比肩出来る賃金(収入/労働力)を安定的に稼ぐのは一
部地域を除いてほとんど不可能に思えるからです。農業生産量は土地面積と土地面積
あたりの収量に比例します(当たり前のことですが)が、面積は増やすことは困難だ
し、収量も化学肥料、農薬あるいは遺伝操作を使っても飛躍的に伸ばすことは原理的
に不可能に見えます。いくら労働力を投入しようが、資本を追加しようが、同一面積
の耕作地で年率3%で収穫量を伸ばすことは出来ません。工場のように資本を投下し
たらしただけ生産量を増大させることは出来ないです。(・・・全部、当たり前じゃ
ないかと言われるでしょうが。)。

生産量が同じでも、収入さえ毎年増えればいいのですが、そのためには農産物価格が
インフレ率よりも高い伸びで高くならないと収入は増えません。それも海外から安価
な農産物が大量に入って不可能ですし、だいたい食糧がそんなに高くなるとみんな困
ります。という風に考えてみると、若い人たちが農業を”唯一”の職業に選び、自分
の生活を維持・発展させる糧にすることは非常に難しい。(一握りの若い人がチャレ
ンジして成功しているとは聞いたこともありますが、一般的じゃないですよね。今も
持続的に成功しているかどうかも知りませんが)。有機農法は農作物の差別化、高付
加価値化と言う意味で興味があります。有機野菜が流通している多くの作物に置き換
わる、なんて思いませんが、個別農家の振興には大きな意味があると思っています。

定年もないけど、昇進や昇給もない。・・・・だったら、農業を会社法人化して単な
る労働者として若い人を雇っていければ、と思うのですが、法人化しても、先に述べ
たような理由で会社が利益を出すのは難しい。利益に聡いアメリカの食品会社は発展
途上国でトマトやパイナップル、野菜などを作る会社を持っています。でも、彼らも
出来るだけ直接農業生産する会社を持つことを避け、地元の大地主に請負制にして、
凶作の時のリスクを地元の人に負わすことで会社を維持しています。発展途上国の農
場労働者は非常に安い賃金なのに、それでも、農産物を生産する会社を作るのを避け
ます。農業の会社法人化は会社を維持・発展出来る限りにおいて若い労働力を農業に
向ける良い考えなのですが、前提となる損益が会社を維持・発展出来るほど安定しな
い。

一つの生き方として農業を選んで、全く農業のバックグラウンドがない人達が農村に
入って行くなんて事が流行ったと聞きました。寒村化している地方自治体もバック
アップして、収入ではなく、自由になる時間と人との繋がりを夢見て。でも、残念な
がら大部分が様々な理由で都会に撤退したことも聞きました。現在はどうなっている
のでしょうか。


ちょっと話は元に戻りますが;
そもそもの大前提として、食糧は海外からの輸入に頼って、我々は儲けの大きい工業
やサービス産業に特化すればいいか(70年代流行った国際分業ってやつですか?)と
いうと、それは余りにも危険すぎると私は思っています。73-73年の世界食糧危機は
もう忘れ去られて、過去の話でしかないのかも知れないけど、合衆国、カナダとオー
ストラリアに主要穀物を握られていて安穏としている国の方がおかしいと思うのです
が、みなさんはどうお感じになられているんでしょう?

ちょっと、話がジグザグし出したので、この辺で止めます。


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