[BlueSky: 1820] コスタリカ (3) まずは INBio へ 2


[From] Kimio OTSUKA [Date] Wed, 19 Apr 2000 14:27:51 +0900

大塚です

 申し遅れましたが、INBio までは首都サンホセからバスで10-20分ほど
でした。115 コロン(約40円)

 INBio Park は INBio の広報・教育のために作られた施設でまだ工事
中のところがあります。本体の方もまだ10年ほどの新しい組織です。

 INBio Park の建物では、INBio の活動が紹介されています。おおざっ
ぱに言うと、"SAVE", "KNOW", "USE" の三位一体というのでしょうか、
この三つを頂点においた三角形の図があって三つの頂点が互いに作用し
あっているような矢印が書いてありました。

 "SAVE" について

 国内のあちこちに国立の保護区が設定されています。これらは INBio
直轄と言うわけではないのですが、INBio が関わりを持って運用されて
います。INBio Park の建物内には、ジオラマ風のコスタリカ地図のなか
にそれらの国立の保護区の位置とその景観を示す図があり、一言で熱帯
といっても様々な環境と生物相があることが一目でわかるようになって
います。
 民間の団体による保護区も他にいくつもあります。
 それらのうち 3 箇所ほどを訪ねることができましたので、次号以下で
ご紹介します。


 "KNOW" について

 INBioではかなり組織的な目録づくりをやっていました。日本でも博物
館などが標本を集めていますが、基本的に各研究者が個人的にやってい
る「家内的手工業」のレベルで、研究者が入れ替わるとその人が対象と
していた分類群は標本の整理すら危ぶまれる例がよくあります。これか
ら紹介するような分業も確立していなくて、各々の分類学者が採集→標
本づくり→同定・記載等を全部こなしている例がほとんどです。
 昆虫の部門を少し見せていただきました。昆虫部門は、部屋割りでい
うと、おおざっぱに言って標本庫数部屋と大部屋の作業室、それから
10人程の専門研究者の個室からできていました。
 標本の収集はバラタキソノミスト(バラ:補助, タキソノミスト:分類
学者 )と呼ばれる人たちが担当しています。全国に散って様々な昆虫を
捕らえて INBio に持ち帰ります。
 標本を作り、おおざっぱな分類をテクニシャンと呼ばれる人たちが作
業しています。大部屋ではそのような標本づくりや区分けの仕事をして
いました。大部屋の広さは小中学校の教室の2倍近い広さがありました。
 最終的な同定や新種の記載等をスペシャリストの研究者が担当します。
十名ほどいる彼ら専門家だけが個室を持っていました。個室というより
ブースといった広さで、大部屋の周辺を机と本棚2、3個分のスペース
囲い込んだという感じでした。

 標本庫は少し大きめの部屋と2,3の小部屋からなり、合計の床面積
は大部屋と同程度でした。標本庫は、ロッカーのような金属の箱に整然
と標本箱が入れられている、というのが基本形でしたが、部屋の壁沿い
などにも標本箱が積み上げられていて、大部屋にもたくさんの標本箱が
ありました。つまり、もう満杯でシステムとしては崩壊しつつあるとい
う印象を受けました。
 コスタリカ大学の修士課程にいる西田さん(大阪出身)によると以前
は大部屋にもっとたくさんの標本があってひどい状態だったそうです。
最近は改善傾向にあると。さらに、隣の植物の部門が引っ越してそこの
場所を昆虫に譲ってもらうことになっているので、標本庫が満員という
状況も(しばらくは)回避されるそうです。

 標本目録は電子化されてデータベースに組み込まれます。標本箱の中
には、「データベース登録済み」のラベルが貼ってあるものがありまし
た。
 整理された標本の一部は画像データベースにも登録されるそうです。


 "USE" について

 以下は INBio Park の建物の展示にあった内容ですが、有用な物質を
作るものがあるか否かのスクリーニングを並行して行っているそうです。
すでに実用に向かっているものもあるとのことでした。

 この有用生物探索があるために、様々な会社との共同研究が行われて
いるそうです。会社のリストがありましたが、その中にはメルクやブリ
ストルマイヤーズなどの大手製薬会社の名前がありました。
 
 このような生物資源(含遺伝子資源)については、一つ間違うと先進
国の企業にどんどんアラされてしまって特許をことごとく向こうに取ら
れてしまうというような事にもなりかねないので、難しい問題をはらん
でいると思います。歳入や歳出の内訳なども知りたかったのですが、時
間的に余裕がなかったので、ここらあたりについての細かい話を聞くこ
とはできませんでした。

 ただ、国家として一本化して対応することにより、例えば契約内容を
統一するとか、企業間の競争を促してより有利な条件を獲得するといっ
た方法で、このような搾取を回避できるのではないかと期待しています。

 多様な生物相があることで経済的利益があがり、上の "SAVE", "KNOW"
へも役立っているということでした。

 
 さて、次号は午前3時頃に起床して、サンタローザへ

大塚公雄
東京医科歯科大学


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